Debut Album"STAND UP!"OUT NOW!

1.STREET DIVE(words&music by 村瀬智行、久松崇)
2.HORIZON(music by 久松崇)
3.静かな月、燃える太陽(words&music by 久松崇)
4.RISING HILL(music by 和田貴量)
5.最後だから(words&music by 久松崇)
6.MORE STRONG!! (music by 久松崇)
7.夢で逢えても(words&music by 和田貴量、久松崇)
8.WEDNESDAY AFTERNOON(music by 和田貴量)

マスタリングエンジニア松本”いおりん”伊織による
                             ライナーノーツ

 1998年11月、岐阜にふらりと遊びに行った。
 岐阜に行く度に、盟友・和田貴量のお世話になる。和田君と僕との音楽的接点は1970年 代当初に論議を醸したはっぴいえんどの「日本のロック」の流れを組む音楽。二人ともム ーンライダーズをこよなく愛しているが、その他の音楽については正反対の趣味のようだ 。僕が大嫌いなカシオペアを彼は好み、「目指すベーシストは、細野晴臣・櫻井哲夫・鈴木 博文」と、どこでどうやったらその接点が見いだされるかわからない三者を例示して、今 日も6弦ベースを右手親指でスラップしている。

 その日彼は、その筋のプロギアショップ「職人の店」の店番をしながら、僕の相手をし てくれていた。「今日はバンドの練習があるからさ」。彼の一言は僕が同行することをさ も当たり前のように示していたし、僕も彼がやっているバンドに興味があった。  そのうち、二人の青年がフラッと店先にやってくる。「やー、やっぱ東京の人は違うね 」と細面の久松くんが言うが、どこがどう違うのか自分でもさっぱりわからないし、僕だ って元々は浜松の田舎者だ。もう一人の村瀬君は久松君に比べると言葉数が少ない。  堤防沿いの道を車で飛ばして、だんだん日が落ちていく秋の夕暮れを一路スタジオまで 向かう。僕がドラムセットに座って遊んでいると、ドラムのハジメくんとキーボードのトモコさんが到着し、 「Stand」のメンバーが揃った。もはや部外者のいる場所もないので、一番隅っこに体育座 りして、演奏のはじまるのを待つ。
 はじまった曲は「MORE STRONG」だった。イントロからグッと捕まえられるようなパワフ ルなロックインストナンバー。スラップベースとドラムが生み出す重たくもスピード感の あるリズムに乗って、リードギターが縦横無尽に駆けめぐり、「これでもか!」と言わん ばかりのフィルの嵐。一転して「WEDNESDAY AFTERNOON」というハネたリズムのポップな曲 をさらっと流し、あとはひたすら「MORE STRONG」を練習しつづける。ハジメくんのドラム はシャープでダイナミックレンジが広く、柔らかなキックのフットワークにシンバルが的 確に決まり小気味がいい。久松君のギターは果てしなく吠え続け、「止められるものなら 止めてみろ」と上へ上へと登り詰めてゆく。ただただ唖然とするばかりだった。この日の 数時間で僕はこの曲を覚えてしまい、「え?歌えるの?覚えちゃったの?」と和田君に驚 かれたりもしたが、それほどの強烈な印象を抱いたのだ。

 ある日、和田君がCD-Rを導入したと聞いた。よくよく聞いてみると「デジタルレコーダ ーをCD-Rオプションもつけて買った」らしい。目的は当然Standの作品の録音であった。  その後、若干のトラブルもあったようだが、無事に録音を終わらせ、Standのアルバム『 STAND UP!』が完成したとの連絡を受けた。  僕は「マスタリングをやらせてくれ」と半ば強引に和田君に申し出た。自分の持つデジ タルオーディオの知識を生かしつつ、友に、そして「あのバンド」に貢献したいと思った のだ。こうして僕は外部で一番最初に『STAND UP!』を聞いた。

 Standの王道はこのアルバムの序盤に続くようなパワー感溢れる楽曲である。「STREET DIVE」のイントロのリフから「おっ、来た来た来た」と期待感を抱かせられる。続く「 HORIZON」では相変わらずの牽引力を持った久松ギターも目(耳?)を引くが、途中でリズ ムパターンが次々と代わり、グルーヴが前へ後ろへ一転するのも楽しい。「静かな月、燃 える太陽」はスピードを保ちつつも腰の据わったリズムで、サビのハモリが彩りを添える。  そうかと思えば、一転してスローなアコースティクインスト「RISING HILL」のような曲 もある。和田君の自慢の一品であるフレットレスエレアコベースによるメロディが美しく 、後半部の盛り上がりは明け方の日が昇っていく情景を思い出させる。  「最後だから」は録音に若干難があるけれども、まさに絶好調なStand節。終盤のヴォコ ーダーボイスも聞き所。「MORE STRONG」は先に述べたとおりで、「これ以上強くなってど うすんの?」とも思わず言いたくなるくらいだ。  そしてスローなヴォーカルナンバー「夢で逢えても」。タイトルだけ聞くとパロディか と思わされるが、イントロのトレモロギターから包み込むような和田ヴォーカルと力感を 持った村瀬ボーカルの対比が面白く、前半部の歌詞の切り方にこだわりも見える。軽快な 「WEDNESDAY AFTERNOON」はヘヴィなStandワールドからの出口として、「おまけではない デザート」として楽しめる佳曲である。

 全体として、各人個々の才能が光りつつもトータルとしてのバンド感が重視された、ま さに「バンドのアルバム」である。1980年代にはフュージョンから派生してロックインス トがもてはやされ、フュージョン界のみならずロック界からも多くのミュージシャンが取 り組んでいた。「打ち込み」と呼ばれる機械が生み出すリズムへの一つのアンチテーゼで あった。ふとそんな音楽を思い出したりもする。楽器を手にしたことのある人ならば一度 は感じる「テクニックへの憧れと挫折」。そんな気持ちを理解できる人に是非聞いてもら いたいアルバムである。1990年代に入ってサンプリング全盛期に入り、一度は「ギター冬 の時代」とまで言われた。僕自身も楽器の演奏よりは作編曲やエンジニアリングに興味を持 った口ではある。そんななかでStandの音楽からは「楽器を演奏する楽しさ」が溢れ出てい る。路傍で歌う少年たちのように、自分の存在を表現する手段を越えたところで、弾いて 音が出る楽しさを追及した、そんなアマチュア作品は久しぶりに聞いた気がした。

松本伊織(わんわんスタジオ東京)






和田”わだっち”貴量による曲目解説

1.STREET DIVE
Stand始まるにあたって初めてできた曲。村瀬のイントロに久松が膨らました。
まだ彼もメロディを作るに不慣れであったためお経のような曲だったが、僕の
「サビ、1オクターブ上げたら?」のひと言で”ひとりクリスタルキング”をやるハメに。
ちなみに、Bメロのベースラインに隠しネタがあるので、よぉーく聴いてみよう!。

2.HORIZON
めくるめくリズムの嵐が心地よい佳曲。久松の作るインスト曲は型にはまってなくて好き。
これもBメロの一部に隠しネタがあるよん。

3.静かな月、燃える太陽
スタジオでセッティング中、久松がいきなりイントロのリフを弾きだし「今の誰の曲?」「僕の新曲」とデモも聴かずにレパートリーに加えることに。それほどこのイントロはインパクトがあったのだ。
この早さで打ち込みまくるハジメのドラムに爆笑。キーボードも辛い。
録音にあたって、コーラスを大幅にチェンジ。

4.RISING HILL
Standが始まる前、僕とハジメが二人でダラダラと曲を作っていた頃、ハジメが持ってきた極ありふれたイントロのコード進行から僕が膨らました。
ここぞとばかりにメロはベースで取らしてもらいました。しかもタカミネのエレアコフレットレスベースだ!。
録音にはベースのノイズを取るのに苦労した。

5.最後だから
久松がStand始まる前から作っていた曲を焼きなおした。といってもベースラインはオリジナルを尊重して完コピ!(他の曲ではまずデモの通り演奏する事はない(^^;)彼が18の時に作ったものだ。
録音は一番最初だったため音が悪いが、録音し直すのも嫌だったのでそのままに(^^;。

6.MORE STRONG!!
Stand3曲目。久松渾身の弾きまくりチューン。このギターは彼にしか弾けない。
なのにも関わらず「Wednesday Afternoon」の次に評判の良い曲。理由あってテンポが遅いが、ライブでは早くなっている。

7.夢で逢えても
久松が曲作りのスランプに喘いでいた頃、僕のところに来て適当にギターを触りながらだべっていたらイントロのフレーズが。「今のいいねぇ!」の僕の一声で「これ膨らましてきます!」と久松。
次の日にはメロ意外全部作ってきた(驚)が、そのまま保留にしておいた。最初は”マウスピース”というタイトルだった。
ライブが盛り上がっていた頃、唄でバラード系欲しいねーって話になり急遽メロと詞を作ることに。
ちなみに作詞をしたのはこれで2曲目。
言葉をメロディーによって細切れにするというのは日本語ロック黎明期へのオマージュ。
タイトルがこれだからってあの名曲のアンサーソングってわけではない。
アレンジは椎名林檎チックに”ためバク”でいってみた。

8.WEDNESDAY AFTERNOON
僕の2作目。Standも最初は1曲目とこの曲しかレパートリーが無かった。
僕の大好きなカシオペアが「ポップクリエイティブ」とかいってたるーい音楽をやっていた頃
(僕は批判的に「ポックリサウンド」と言っていた)「あぁ、昔のカシオペアが聴きたいなぁ...
今のカシオペアにそれを望めないのだったら自分で作ってしまえ!」
というつもりでできた。「カシオペアっぽい」と云われて本望。
因みにレコーディングでは理由あって僕がドラムを叩いている。

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